新春のお手入れは、両手しかできませんでした

 

何から綴ればよいものか・・・

 

昨年11月、札幌で入院しているおばあちゃんのフェイシャルエステをしました。

その模様はこちらでご覧いただけます

http://sakura444.hatenablog.com/entry/2015/11/23/170257

 

年が明けて112() 新春のお手入れのため、札幌に向かいました。

今回は4日間の滞在なので、うまく時間をやりくりできるかな、と思いましたが、

案外、いろんなことに時間がとられてしまって、

「この日だけは絶対にお手入れしないと!」と強い意志を持たないといけませんでした。

 

13日におばあちゃんの病院に行くはずがいかれず、

結局14日の午後に、ひっそりと向かいました。

 

ここからが美容のお話になります。

 

おばあちゃんの様子は、もうしゃべることも食べることもできませんでした。

 

鼻から酸素が送られて呼吸をし、

顎というか首のところから栄養の点滴がつながっていて、

お顔をへたに触ると、そういう医療器具が外れてしまいそうです。

 

それにもし1mmでもズレたことが原因で呼吸や血流に異常が発生してしまっては、

何の為にお手入れしているのか、まったく本末転倒なことになってしまいます。

 

様子を考え、お顔のお手入れはあきらめました。

その代り、両手の指先から手首のちょっと上くらいまでをお手入れすることにしました。

 

しゃべれなくても、目は見えています。

 

きっと自分の手は見えると思います。

 

その自分の手が美しかったら、自分ではなかなか観ることのできないお顔よりも、

もしかしたら気分が少しでもよくなるんじゃないでしょうか。

 

細く痩せてしまって、もう爪もガタガタになってしまっていましたが、

 

まずは右手から、お手入れを始めました。

 

 

サンダースペリー化粧品より

(1) ディープ・クレンジングクリーム レモン

(2) ウィートジャームビューティーマスク

(3) コスメティックローション

(4) キャロット&カレンドラ ナリシングエッセンス

(5) モイストリッチミルク

 

実は、私としたことが、サンフラワーティシューオイルを忘れてしまっていたのです!

何という失態!なんて馬鹿な私!

 

しかし何とか苦肉の策できれいにしていきました。

 

では一つずつ。

 

(1) ディープ・クレンジングクリーム レモン

以前、おばあちゃんがまだしゃべれたとき、クレンジングクリームをおばあちゃんの手に乗せて塗りたくったら、

「はぁ~~ きもちいいぃ~~」とため息のような感動のような声を出してくれたのです。

寝ている時でも、このクレンジングを手に乗せてもみこむと、目を覚まします。

ひんやりしてマシュマロの中に手を入れたやさしさのクリームを通じて、

だんだんとお手入れする私とおばあちゃんの体温が行き来するようになり、

すっかりお互いの手が一つになったような感覚を覚えると、もうそこに一滴の汚れもなくなっているような気がします。

ホットタオルでクリームだらけの手を包み込み、優しくふき取るだけで、もう、10歳くらい若返っているのです。

私はその手に感動しました。

 

 

(2) ウィートジャームビューティーマスク

本当はここでサンフラワーティシューオイルを使ってマッサージをしたいところですが、

あいにく私のすっとこどっこいにより、今日は持ち合わせがありません。

パウチは持っていましたが、パウチを開けても半分くらいしか使えず保管もできない環境です。

こうなったら、ウィートジャームでやろう!と勝手に決めまして、

本当だったらパックしてしばらく寝かせてくものなのですが、500円玉サイズ2個分くらいの量を取り、

おばあちゃんの右手をこれでマッサージしました。

指の間、血管の流れや骨の向きに沿って、優しくもみこんだり、爪の甘皮のところまでよくすりこんだり、

手のひらの筋肉の形を意識しながらキュキュッとマッサージ。

ふと気づくと、おばあちゃんの手は少し赤みを帯びてきて、熱を発していました。

血行が良くなって、手の芯から動き出した、という感じでした。

全身にこれができたら、寿命も延びるのかな、なんてふと思いました。

 

そっとホットタオルで包み、ウィートジャームを拭き取ります。

爪がつやつやになっているのが感動的でした。

 

(3) コスメティックローション(化粧水)

コットンはわざと使わず、私の手のひらにとったコスメティックローションを、おばあちゃんの手にそっとなじませました。

コットンを使いたくなかった理由は、おばあちゃんと自分の隙間には何も入れたくなかったからです。

しっとりと化粧水がお肌に入っていきます。おばあちゃんの手がどんどん潤います。

お肌が「おかわり!」と言っているようでした。だから、惜しまずにどんどん投入しました。

さっきのほてりが取れて、なんだか、おばあちゃんの右手が色っぽくなったような気がしました。

 

(4) キャロット&カレンドラ ナリシングエッセンス(美容オイル)

そうです!ひまわりのオイルを忘れてても、カレンドラはちゃんと持ってきていたのです!

なので、こちらの美容オイルをたっぷり使いました。

すっかり手のお肌の表面が柔らかくなっていたので、このカレンドラもどんどん入ります。

す~っとなじむから、「ぬったっけ?」と思ってしまいますが、実は、塗った後の持続力がすごいんですよ。

しばらく会えなくなるし、とも思って、いつもより余計に塗り込みました。

 

実は、このカレンドラってとてもいい香りがします。おばあちゃんは食欲がわいたようで()

このカレンドラをスポイトでとっておばあちゃんの顔に近づけたら、口を開けて顎を突き出し、「あーん」としてくれました。

おばあちゃんの実孫である私の友人が、おばあちゃんのお顔を少しきれいにしたい、と言って、

カレンドラをちょこっととって「これ何?」と臭いを嗅いだんですよ。

友人はさらに

「あ~~いいにおいする~」って感動して、「ばあちゃん、これいいにおいだよ。わかる?」と、

おばあちゃんに香りを試してもらったら、おばあちゃんは「味わいたく」なったようで()

 

私たちはついつい、大爆笑でした。あははははは。食べられないってば~

 

食べ物じゃない、という現実を認識したのか、おばあちゃんは「ちぇっ」という表情をして目を閉じました。

面白かったな。

 

 

(5) モイストリッチミルク

仕上げに、ずっと非売品だったのに最近商品化された超優秀な「モイストリッチミルク」を

指先からだんだん手のひら、手の甲へと伸ばしていきました。

実はこれもいい香りがします。

おばあちゃんの手がすっかり「ご婦人の手」として完成しました。

 

 

右手が終わったところで看護師さんがやってきて、

「寝返りを打つので出てってください。」と言われまして。

 

今度は私が「ちぇっ」と思って、友人と二人、お部屋の外に出ました。

 

まぁいい機会なので、夜に会いに行く人へ連絡したり、

私も一休みしたりしてね。

 

30分位して、もう一度病室に入ると、今度はおばあちゃんが反対側を向いていました。

 

当たり前か。

 

そこで、同じ行程を左手に繰り返し、終了しました。

 

 

おばあちゃんは、両手がキレイになって気分が上がったように見えましたよ。

耳元でいろんなことを話しました。

 

全部で10人近くいる孫の中で、私の友人はその一人目、初孫に当たります。

だからもう、かわいいし心配だし会いたいしそばにいたいし…と、

親族の中でも特別な存在のようです。

 

そうは言っても全員大好き。平等に皆かわいいのは当然ですね。

 

孫たちの近況をおばあちゃんの耳元で報告すると、表情が少しですが変化しました。

 

色々と時間が迫っていたので、「じゃぁ、帰るね。」と挨拶をして。

 

明日また来るから、と言って。

 

 

お手入れしている間、ずっと、激しく吹雪いていましたが、

おばあちゃんに挨拶して病院の外に出ると、雪も風もやんでいました。

バスも、はからずもバスが迎えに来てくれたかのようなタイミングでやってきて、

寒い中待つ必要もなく、駅に向かうことができました。

 

そこから2時間の移動でしたが、その道中、吹雪がやんだ奇跡や、バスの奇跡を話し合い、

 

これはおばあちゃんが「ありがとう」って言ってくれているんだね、と胸が熱くなりました。

 

 

10月、11月、1月と、おばあちゃんのお手入れは3回しかできませんでしたが、

 

2016年1月22日(金)7:28am おばあちゃんはお空へ旅立ちました。

 

私の手元には、おばあちゃんのために用意した爪磨きやサンダース化粧品がまだ残っています。

 

おばあちゃんへのお手入れは、今思えば、「旅支度」だったのかもしれません。

 

私はおばあちゃんのお役に立つにはまだまだ足りなかったように思え、

そういう気持ちが自戒の念として自分を責めたりしますが、

そういう気持ちがわきあがってくると必ず、「それでも間に合ったから」という声が聞こえます。

 

おばあちゃんは生きている間に、旅立つ身辺整理をしていました。

 

お母さんを通して引っ越しを済ませたり、孫たち(私の友人)がおばあちゃんの写真整理をしたり、

おばあちゃんのお母さん、つまり友人の「ひいおばあちゃん」のところに、

友人のいとこ、つまりおばあちゃんの孫夫婦が同居することになったり、

「おばあちゃんが旅立った後は何の心配もない」となるよう親族の新しい道が決まっていました。

 

私はお顔も、そのお手も、きれいにして差し上げることで、

その旅立ちのお手伝いになっていたのでしょうか。

 

 

肺の病気から肺がんが見つかり、それが脳に転移し、最後の手術から1年。

 

おばあちゃんは手術の時に「あと1年生きたい」とお医者様におっしゃっていたそうです。

 

 

おばあちゃん ぜひ、虹の向こうに行ったら、多くの人に「美しいお肌」を自慢してくださいね。

 

私がそちらに伺える日が来たら、またきれいにして差し上げられるかしら。

 

私はおばあちゃんへの感謝を伝える手段として、「お手入れ」を選びました。

 

他にも方法があったかもしれません。

 

でも、「美しくあること」のお手伝いをすることしか思いつきませんでした。

 

この感謝の気持ちが私を動かし、居ても立っても居られなくなって、

 

東京から航空券を取りホテルを取って、自分のサンダース化粧品を引っ提げていったのだと思います。

 

他には何もなかった。

 

 

ありがとうございました。

 

最後に…

私が札幌に飛んだあと、まりちゃんから「お手入れの応援グッズ」が届きました。

東京の自宅に届いたので、受取る前に私は出発してしまったわけですが、

そこにはびっくりするほどたくさんの商品と非売品のパックが入っていました。

東京に帰ってきて受け取った時には、まだおばあちゃんには変化がありませんでした。

こんなことになってしまったので、まりちゃんのご厚意をどうしたらいいかと考えています。

この時にはお母さんのお手入れを全くさせてもらえなかったので(忙しすぎて)

次回、お手入れして差し上げようと思います。

まりちゃんにも、本当に、本当に、ありがとうございました。