美容と寿命について

「年を取って一人ぼっちになったら、汚いおばあちゃんになって、若い人たちから嫌がられ、引きこもって孤独死していくのかな。」

 

そんな恐怖を感じたことがありました。

20代かもっと前か… 自分で自分の世話ができなくなるくらい年老いたら、髪ボサボサで汚れた衣服にガサガサの指、異臭を放ち、邪魔者扱いされるのかな。と思ったことがありました。

 

友人の祖母が肺の病気になり、入院して手術をしたのが2年前。友人のいとこ(つまりその病気のおばあちゃんの孫)が結婚式をする春までは何とか生きる、と希望を持って病気と闘っていた。

 昨年の春、無事に結婚式を執り行い、親戚中が喜びに包まれた。

私はその友人と一緒に里帰りに付き合い、おばあちゃんにもお母さんにもお会いして、一緒に食事をして、いとこも参加し、親戚中の女子だけが集まる女子会に同席して仲良くさせてもらった。

 

年末になって、おばあちゃんは癌を発症していたことがわかった。心配になっお見舞いに行くと、お医者様からそう長くはないから覚悟するように言われたそうだが、見事な精神力で手術を乗り越え、リハビリしていた。

リハビリでは淡々とお料理を進められる姿に、看護師さんも驚いたそう。

 

その後。脳に転移している癌と闘っている。

 

この秋、お母さんから「ちょっとヤバい」という連絡があったようで、本気で心配していた友人。私はそのお話を聞いて居ても立っても居られなくなり、サンダースペリーの販売店をやっている友人に相談した。

 

「いつも私がやってもらっているお手入れを、おばあちゃんにやってあげてほしいんだけど。」

 

場所は札幌。東京から一泊くらいの旅費は払うからなんとか、と話したが、「それよりもさくらちゃんがやってあげな」と言われ、お手入れ方法を習った。

 

まぁいつも自分で自分の顔をやっているようにやればいい、と、クレンジングから仕上げまでのフルコースが入ったパウチのセットを持たせてくれた。

 

いざ。札幌へ。

 

新千歳空港からホテルにチェックイン。すぐに飛び出しておばあちゃんのいる病院へお見舞いに行く。

おばあちゃんはちょうど夕食の時間でした。看護師さんにエプロンを付けてもらっているところに「こんばんは」と伺うと、とても驚いた様子で「何しに来たの?」と言われた。「おばあちゃんに会いに来たんです」と答えると、「あ~」と言葉にならない声を出しながら笑顔で喜んでくれました。

おかゆに自分で漬けた梅干しを入れ、もしゃもしゃといただく姿にほっとした私たち。

 

食事を終えてお薬ものみ、ひと段落したところで近況を尋ねたり話したり。

「明日、おばあちゃんのお顔をお手入れさせてください」とお願いすると、「もうこの年で…」と恥ずかしながらも、「いいよ」と答えてくれました。

 

ひとまず我々もホテルに戻り、午後から買い出しに出向く。

おばあちゃんのお食事用の首枕、爪きり、爪のやすり、お手入れ用のコットン、その他。

慣れない街で買い物するため時間がかかってしまい、急いで向かうも既に16:30を過ぎてしまった。くぅ。雪虫め。

 

おばあちゃんに「お待たせしました」と挨拶をして早速準備。

爪切りとやすりで、まずはガタガタの爪を整える。指先が乾燥して荒れている。

爪が終わったら「あたま」と訴えるおばあちゃん。あたま?あたまって?

「あたま…ヘッド…」

ヘッド?

しかし指は耳へ。あ!!「耳掃除ですね?」と聞くと「そう…」と答えた。

そこで、私は綿棒をもって耳掃除に取りかかり、友人には手先のお手入れを頼んだ。

大量な耳垢を取りながら、友人に指示を出す。

「クレンジングを500円玉くらい出しておばあちゃんの手をマッサージして!」

「お湯であっためたタオルで拭き取ったらひまわりオイルでマッサージして。骨に沿って。優しく!」

クレンジングは寒天が含まれているので肌触りはとても優しい。

おばあちゃんは「あぁ~気持ちいい~~」と感動してくれた。

耳から取り出した垢を見せると「うわぁ~」と驚く。

化粧水を含ませたコットンで耳を拭いて完了。(サンダースの化粧水は殺菌効果があるので耳掃除の仕上げにちょっと拭くと、清潔感が長持ちするのだ!)

かゆみもなくなりさっぱりしました。

ほぼ同時に両手のお手入れも完了。おばあちゃんはご自分の手を見てとろける笑顔になってくれました。

 

ここで夕食。

おばあちゃんは「手がキレイになったから」と、昨日は一切手を付けなかったおかずももりもり召し上がり、デザートのパインも完食。この食欲には、看護師さんもビックリしていました。

食後のお薬をのみ、一休みしていたら、おばあちゃんが私に耳打ちしてきた。

「お姉さん、つづき」(早く顔のお手入れをしてくれとの催促(笑))

私は「はい!」と返事をして、すぐ準備をし、お手入れを始めました。

 

フルコースをやると2時間かかってしまい、面会時間が過ぎてしまうのと、おばあちゃんが耐えられるかどうかの心配があったので、1時間くらいで終われるよう調整。

透明感を出すレモンのクレンジングでお肌の表面をさっぱりさせ、

ひまわりのマッサージオイルで血行を促進しリンパを流し若々しく、

ウィートジャームで栄養分を補給し、ハリと弾力とアンチエイジング

化粧水で水分補給しながらお肌の表面を殺菌、

特別に販売されていない潤いクリームをたっぷりいれて、

お肌にふたをしてダメージから守られるようUVできるローションで完了。

 

つやつやのピカピカになったお肌になったところで記念撮影。

まぶたが上がって目がぱっちり開きました。

 

「明日また来てね」

と言われて「明日また来ます」と約束をして、ホテルに帰りました。

 

おばあちゃんは確かに癌を患い、今は歩くのも難しいし右手も使えない。

なのに、お手入れした後右手を持ち上げてみたり、よく話したり、

私の肌をみて「あんたの肌はきれいだね。私もこうなるね。」と笑った。

つい何日か前までは「あと数日」と言われたのに、元気にご飯を食べて冗談を言って笑っているんです。

美しい肌を取り戻して喜んでいるんです。

私は「おばあちゃんは生きることを諦めていない。」と、確信しました。

 

誰だって、汚いおばあちゃんになって死んでいきたいなんて、思っていません。

いつも、どんな時も、美しくキレイでいたいのです。

 

看護師さんに爪を切ってもらうと、いつもガタガタになる。適当に扱われているのが爪切りから伝わってくる。

耳掃除は訴えるまで誰もやってくれない。自分の耳は頻繁に気にするのに、患者さんがそこで寝ていると、もう死ぬんだからと耳掃除もしてもらえない。

耳掃除をしてもらえないから垢がたまって聞こえが悪くなってしまう。何度も聞き返すと相手が面倒で話してもらえなくなる。会話が途切れ、もう年だから、もうすぐ死ぬから、と言われてしまう。

 

もうすぐ死ぬからって、だからって、いい加減にしていいわけではない。

おばあちゃんは、きれいになりたいんだ。

言葉が思うように出てこないから、適当な無関心な態度で扱われていることに気付いていても、悔しいという想いを抱えながらどうにもできないでいる。

イライラが溜まって家族に当たってしまうこともある。コミュニケーションの悪循環となってお互いに面倒になってしまう。

でも、見殺しにはできないことも知っている。殺すことだってできないのだ。

 

おばあちゃんは本当にきれいになった。頬がつやつやしてほんのりピンクになり、色気さえ帯びている。素敵な笑顔になった。それだけで、生きる気力がわいてきた。

看護師さんもお医者さんも驚くほどよく食べ、元気になり、「あと数日」というのは一体なんだったのか?と首をかしげるほど。

 

札幌3日目。夜の飛行機で帰るから、それまでの短い時間で、今度は友人のお母さんをお手入れした。

友人のお母さんということは、おばあちゃんの娘である。

お母さんなら、と、フルコースやってみた。

 

お肌の表面を柔らかくして潤いをどんどん入れてきれいにするアーモンドのクレンジング

透明感を出すレモンのクレンジング

血行促進してリンパを流してお肌の健康状態を取り戻すひまわりのオイル

栄養分をどんどん入れてハリと弾力とアンチエイジングのウィートジャームでパック

化粧水はパウチだけでは足らず、私の私物から補充して化粧水パック

時間がなくなってきてしまったのでハネボガードをうっすら塗り込み蒸しタオル

非売品のモイスチャークリームをたっぷりぬって

仕上げに UVローションでふたをしダメージから保護力アップ!

 

さぁ、どうだ!

 

ドキドキしながら完了したら、お母さんは一言

「この鏡はきれいに映るのかい?」

美しく大変身した自分の顔にめちゃくちゃ驚いていた。

 

ちがいますよ、お母さんがキレイになったんです、と伝えると、それからもううれしくてうれしくて、おばあちゃんの病院に向かうまでの道のり、ずっと感動していた。

 

私はちょっとうれしくなって、おばあちゃんもお母さんもきれいにしてあげられたことに感謝でいっぱいになったのです。

 

病院に到着すると、また、おばあちゃんの夕食の時間になってしまいました。

3日間とも夕食タイムとは申し訳ない。と思いながらも、おばあちゃんのそばにいさせてもらいました。

すると、おばあちゃんがお母さんのお顔をじっと見て、

「あんたも顔やってもらったのかい?」

と、お母さんの変化に気づいたのです。お母さんはすごくすごく驚き、「わかる?なんでわかった?」と言いながら喜んでいると、「わかるよ。」とおばあちゃんは一言答えました。

友人はおばあちゃんが昨日以上にまたモリモリとご飯を食べている姿を動画撮影していましたが、同時にお母さんは自分の携帯で自分の顔を自撮りしていました。

おかあさんが「これで嫁に行けるね」とおばあちゃんに言うと、「うん。嫁にいけるね。」と笑いました。

お二人とも、本当に本当にきれいになって、喜んでくれていたのです。

 

飛行機の時間が迫っていたので、最後におばあちゃんの手を握って挨拶すると、おばあちゃんは笑顔で、

「ほんとにね、うれしい。ありがとう。がんばんなきゃね。」

とおっしゃいました。

私が「あと3回やれば、こうなりますよ。」と自分の肌を指して言うと、爆笑してくれました。「そうだね」って言いながら。

 

お母さんは仕事と介護で疲れていて、いくら母とはいえ、希望の見えない日々を送っていたと思います。

それでもきれいになって、

「子どもは親を選べないで生まれてくる。自分の子供たちをみんな変わらず愛していると同じように、母は自分を愛してくれている。」

という気持ちを思い出したみたいでした。

 

私は、別に、マッサージ師でも医者でもなく、セラピストでもなければエステティシャンでもありません。単なる、サンダースペリーユーザーです。

今回お手入れが実現できたのは、私をいつもきれいにしてくれているまりちゃんの好意で、お手入れフルコース用パウチをくれたり、お手入れ方法を教えてくれたりしたからでありまして、私はただ、やっただけです。

でもそれだけで、おばあちゃんは生きる気力が生まれ元気になり、お母さんも美しいお肌と心を取り戻しました。

 

あと、7,8年は生きると思います。

またお手入れして差し上げられるよう、自分も頑張ろうと思いました。

 

感謝。